電子領収書とは?発行方法から導入のメリット、留意すべき点まで徹底解説
領収書の発行・管理業務を効率化して業務負荷の軽減やコスト削減に繋げるために、効果的な手段の一つとなるのが電子データとして発行・保存される「電子領収書」の導入です。
今回は電子領収書の発行方法から導入のメリット・デメリット、電子保存への切り替えにあたって押さえておきたいポイントまで、基礎知識を詳しく解説します。
電子領収書とは
電子領収書とは、電子データとして発行・保存される領収書です。次のいずれも電子領収書に該当します。
1.PDF形式などの電子データとして発行されたもの
2.紙で受け取った領収書を撮影、もしくはスキャンしてデジタル化したもの
以前は、領収書は紙で保存しておかなければならないと法律で定められていましたが、1998年施行の「電子帳簿保存法」によって、電子データでの管理が認められるようになりました。
領収書を電子化するにはどうしたらいい?
領収書を電子データとして発行・管理するにあたっては、「電子帳簿保存法」で定められた下記の要件を満たさなければなりません(各要件の詳細については、必ず最新の国税庁資料で規則や要件、注釈をご確認ください)。
【自社のPCなどを使って電子領収書を作成した場合】
1.電子計算機処理システムの概要書などの備え付け
2.見読可能装置(ディスプレイやプリンターなど)の備え付け
3.ダウンロードの求めに応じること、もしくは検索機能の確保
【紙で発行・受領した領収書をスキャナで読み取り、デジタル化した場合】
1.入力期間の制限
2.一定水準以上の解像度、カラー画像による読み取り
3.タイムスタンプの付与
4.バージョン管理
5.スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
6.見読可能装置の備え付け
7.整然・明瞭出力
8.電子計算機処理システムの開発関係書類などの備え付け
9.検索機能の確保
【電子データとして領収書を受領した場合】
1.改ざん防止措置の実施(タイムスタンプの付与、訂正・削除を行った際に履歴が残るシステムでの授受/保存、改ざん防止規定の策定と遵守 など)
2.検索機能の確保
3.見読可能装置の備え付け
領収書を電子化するためのシステム導入
電子領収書をスムーズに導入するには、専用のシステムの活用が有効です。
1.システムに記載内容を入力すれば簡単に電子領収書を発行できる
2.複数件まとめての発行や送付ができる
3.管理画面で発行・送付の履歴や状況を確認し、発行漏れや二重発行などのミスを防げる
※保存方法によっては、「訂正・削除を行った際に履歴が残るシステムでの授受/保存」といったシステムに関連する要件が設けられているものもあるため、該当する要件をよく理解した上でシステムを選定する必要があります。
電子領収書のメリット
電子領収書を発行するメリットとしては
1.領収書作成作業を効率化できる
2.印紙税がかからない
電子領収書を受け取るメリットとしては、
3.経費精算業務を効率化できる
4.管理スペース削減や長期保存ができる
5.経費精算に使った領収書やレシートを検索しやすい
などが挙げられます。
1.領収書作成作業を効率化できる
領収書を電子データで発行することで、領収書の印刷や記入、押印、郵送などの手作業を排し、領収書発行業務にかかる労力や時間を大幅に削減できます。またミスが発生するリスクを抑えることや、発生してしまった際のスピーディな修正対応を可能にするという点でも、業務効率化に貢献します。
2.印紙税がかからない
「印紙税法」では一定の文書に印紙税を課すことが定められています。紙の領収書(一定の金額以上)の場合は収入印紙を貼り付けることで印紙税を納める必要がありますが、電子領収書はここでの「文書」に該当せず、印紙税の納付は不要です。領収書を電子データで発行することで、コスト削減に繋げられるのです。
3.経費精算業務の効率化
電子領収書を受け取った場合、例えば領収書をスマートフォンで撮影して外出先からシステムにアップロードするなど、手軽に保存や経費精算申請を行うことが可能に。申請・承認のための出社や帰社を必要とせず効率よく処理を進めることができます。
また電子データの取り込みによる入力・仕訳の自動化、領収書の添付忘れに伴う社員とのコミュニケーションコストの削減、紙の領収書のファイリングにかかる時間や労力の削減などによって、経理担当者の業務負荷も大幅に軽減されます。
4.管理スペース削減や長期保存ができる
領収書は形式(紙・電子データ)を問わず一定期間保存しておくことが法律で義務付けられていますが、電子領収書の場合はPCやサーバー内、クラウド上などに保存しておけるため、倉庫などの管理スペースを削減できます。また紙媒体と異なり劣化することがなく、さらにバックアップもとっておけるため、長期保存にも適しています。
5.経費精算に使った領収書やレシートを検索しやすい
保存しやすいだけでなく、確認が必要になった領収書を取り出しやすいこともメリットの一つです。紙の場合は膨大な領収書を1枚ずつ確認して手作業で探す必要がありますが、電子データの場合は、宛名や品目名、日付などから検索して簡単に見つけることができます。
電子領収書を発行・管理する際の留意点
電子領収書の発行・管理を行うにあたっての留意点としては、次の2つが挙げられます。
1.要件を満たせなければ罰則を受ける可能性がある
2.専用のシステムや機器の導入に初期費用がかかる
1.要件を満たせなければ罰則を受ける可能性がある
法律で定められた要件を満たしていなければ、領収書を電子データとして管理することは認められず、罰則を受ける可能性も。要件に沿って正しく運用するための仕組みづくりを行うことが求められます。
2.専用のシステムや機器の導入に初期費用がかかる
領収書を電子化するには、専用のシステムや機器が必要です。ペーパーレス化や自動化によるコスト削減の効果が見込める一方で、一定の初期費用や運用コストがかかることはデメリットの一つだと言えます。
電子領収書に切り替える時のポイント
スムーズに電子データでの領収書発行・管理に移行するためには、次の2点が重要となります。
1. 社内体制を整える
2. 複数のシステムを比較する
1.社内体制を整える
要件を満たした正しい管理を行うためには、事前準備として社内の体制をしっかりと整えておくことが欠かせません。
1.要件に準拠したシステムを選定し導入すること
2.電子領収書の発行・管理にまつわるフローや運用ルールを整備すること
3.マニュアルや研修を通じて社員に周知すること など
スムーズに導入できるように計画的に取り組みを進めましょう。
2.複数のシステムを比較する
一度導入した後に、システムの切り替えを行うのは容易ではありません。システムを選定するにあたっては、要件への準拠だけでなく「自社の運用にマッチするか」も考える必要があります。
1.自社で取り扱いのある領収書の形式、整備した業務フローや運用ルールに、システムの仕様が合うか(もしくは自社の要望に合わせて柔軟なカスタマイズができるか)
2.イレギュラー対応が可能か
3.自社で利用している他ツールとの連携は可能か
4.機能や操作性は、社員のITリテラシーに見合っているか
などをふまえ、複数のシステムを比較した上で決定できるとよいでしょう。
まとめ
電子領収書とは、「PDF形式などの電子データとして発行されたもの」「紙で受け取った領収書を撮影、もしくはスキャンしてデジタル化したもの」など、電子データとして発行・保存される領収書を指します。
領収書発行や経費精算の業務効率化、コスト削減などさまざまな導入メリットがありますが、法律で定められた要件を満たさなければ電子化が認められないため、注意が必要です。
正しく効率的な運用を行うために、自社の業務フローや運用ルールにマッチしたシステムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。